あたらしい家族
いよいよ本格的な梅雨になりました。
晴れていても湿度が高いですし、ジメジメしていて体力が奪われそうです。
まだ6月に入っても早朝は涼しくて心地の良い日がありますから助かります。
あたらしい家族のお話です。
ご旅行に出かけられたワンコの飼主さんからお土産をいただきました。
そのお土産は、この春に迎えられたあたらしい家族(ワンコ)の名前ではなく、今年のはじめに亡くなったお兄ちゃんワンコの名前で届きました。そこには「ありがとう」の言葉が添えてありました。
お兄ちゃんワンコはうちの動物病院の前をよくお散歩するワンコでした。
通りの向こうからお母さんと楽しそう♪に歩いてくる姿をよく見かけていました。
突然元気がなくなり、食欲もなくなり来院しました。
お兄ちゃんワンコは、慢性腎不全でした。
頻回の点滴が必要だったので、お父さんとお母さんがご自宅で点滴をされていました。
定期的な治療や検査だったり、突然のいろいろな症状だったり、何かしらの治療が必要なときには随時ご来院されました。
当院の前をお散歩で歩く事はめっきりと減りました。
慢性腎不全は治らない病気です。
良い状態にすることはできることが多いのですが、その状態を維持することはまた大変です。
ヒトの場合には人工透析になるのでしょうが、動物の場合にはいろいろとヒトと異なる条件から、急性の腎不全に限定的に使われるくらいです。慢性腎不全には適応外とされています。
点滴をすることで数値を下げたり、下げた数値を維持したりできますが、これも最後の日を迎えるまで続けます。
毎日だったり、隔日だったり。
それでも次第に弱って行く家族を間近で看ることは精神的にも肉体的にも難しいことです。
お父さんともお母さんとも一緒に一喜一憂しました。
慢性腎不全では食欲不振がみられます。
「今日、食べたんです!! ほんとうにちょっとですが。」
「今日は食べてくれなくて、いろいろと試してみているのですが。」
そんなやり取りを何回したでしょうか。
そんな中で、お兄ちゃんワンコは旅立ちました。
ご家族に見守られて。
遠くにお住まいのお兄ちゃんとも会えた後で。
それから数か月したところで、笑顔の母さんがおみえみなりました。
あたらしい家族をむかえられたのです。
その笑顔にはお兄ちゃんワンコとの闘病のお疲れはありませんでした。
あたらしい家族は、とってもやんちゃさんで、エネルギーの塊です。
子犬特有の疲れる事のないパワフルな遊びを長い時間できます。
ワクチンを接種したり、内科検診をしたり、何かご心配があると診せて頂いております。
当院の前には診察室が診察待ちの方々でいっぱいになったときのために、2-3名程が座る事ができるベンチがあります。
診察時間以外は、このベンチはいろいろな方が使われていますが、この新しい家族もこのベンチの愛用者です。
かつてはお兄ちゃんワンコとお散歩をされたお母さんが、あたらしい子犬ちゃんとよくこのベンチで休憩されています。
そのご家族が来院されることがありましたので、お土産の御礼を申し上げたところ、このようなお話をしてくださいました。
お兄ちゃんワンコの治療の場として、当院を選ばれた事は本当によかったと。
家族として本当によいお別れができたと。
僕たちにはもったいないお話でした。
またとてもありがたいお話でした。
そしてお話は続きました。
だからあたらしい家族を迎えることができました。
長い闘病生活で疲労が蓄積し、心身ともに落ち込んでしまわれた場合には、その後にあたらしい犬を迎える事は難しいことだと思います。
しばらく犬はいいです。とか、もうあの子が最後です。とか、
そのような中で、あたらしい家族を迎えられて、お兄ちゃんワンコが最後を過ごした当院に通っていただけることは僕たちにとってとても嬉しいことです。
どうぶつとの生活を楽しかったと思って頂ければ嬉しい。そんな思いは毎回の診療での願いになっています。