10年ぶりですね。 -犬の前十字靭帯の損傷-
花粉が飛んでいますね。毎年のことながら、春のが来るのと、花粉が飛び始めるのが同時ですからね。今日、動物病院は休診日。やっと自分の病院へ行けましたよ。目薬と点鼻薬をもらってきました。これで今シーズンは乗り切れそうです。
お電話をいただきました。
お話をするのは10年ぶりくらいです。
猫さんの飼主さんで、これまで何度も診せてもらっていました。
まだ開業する前のことです。
前の職場にとても近いところにお住まいですから、長い間かかりつけとしてご利用いただいておりました。
水天宮前に開業してからはお会いすることはありませんでした。猫さんですもんね、遠出は苦手なはずですから。
今回はワンコです。
この子は、開業から数年程して生まれたようですので、もちろん初対面です。
ご自宅の近くの動物病院に行かれていたのですが、足の具合が悪く、2件の動物病院を紹介されたとのことでした。1件目が手術を多く行なっている動物病院、そして2件目が当院です。
今回、この子の病名は前十字靭帯の断裂。検査では部分断裂で、完全には切れていないようでした。こうなりますと、傷めた方の足はあげたままだったり、ケンケンでしか歩けなかったりします。普通には歩けません。
治療は手術です。
いくつかの手術があります。
関節外法、TPLO、TTAです。TPLOとかTTAなどと日本語ではない手術方法は、どちらもスネの骨を切る手術です。
前十字靭帯の損傷には、関節外法と呼ばれる、いわゆるスネの骨を切らない方法が90%以上の場合で用いられます。
TPLOとTTAが行なわれるのは、この治療のための手術では10%未満です。
違いは、関節外法よりもTPLOやTTAは早くに歩けるようになります。
1件目の動物病院で勧められたのはスネの骨を切る手術で、飼主さんは、できれば骨を切るのは避けたいということでした。
お電話では、先生のところではどのように手術をするのかというご質問でした。
10年ぶりの久しぶりのお声に、ちょっと驚きながら、よかったら一度診察にいらしてくださいとお話をしました。
来院されて、いろいろとお話をしました。
前の動物病院で受けられた検査結果もお持ちでした。
レントゲン検査結果を診て、どの手術法がご希望かを再度伺いました。
いずれにも、メリットとデメリットがあります。
お話をしたのは、手術後間もないところで比較をすると、TPLOやTTAは早くに足を使い始めますから、そこがメリットです。ただ、手術から1-2か月経ちますと、どちらもほぼ変わらないくらいに歩けます。
細かな違いはありますし、程度によっては、どれを選択しても元のとおりにはならないこともあります。
もともとスネの骨を切らずにどうにかできないかというご相談でしたが、いろいろな方法のお話をして、最後にお勧めとして関節外法と呼ばれる、スネの骨を切らないものを提案しました。
お家の近くにある魚屋さんのご家族も、この子の家族のようなものだということでした。
そこの方々も心配されているとのこと。
大丈夫ですよ。歩けるようになりますよ。
あまり楽観的はお話はいけないかも知れませんが、そう笑顔でお話しました。
どうぞご検討くださいね。
またご予約はお電話でも結構ですから。
できればお家でご相談していただき、どちらの動物病院かを選んでもらおうと思いました。
お家の方は、もうその場で予約をされてお帰りになりました。
前日からお預かりをして手術をしました。
ご家族の方はとても心配そうで、生命に関わることはありませんからとお話をしましたが、終わるまでは安心できないのは当然ですね。
普段どおりに手術を進め、終わったら、ちょっと早めでしたがお電話をしました。
ご面会は今日でもできますから。
ご家族の方々は、待ちきれなかった様子で、面会ができる5時にはもう来院されていました。
まだすぐには立てませんが、尻尾をふりふりするワンコを見て安心されているようでした。
ちょっと太めのワンコで、足にはそれなりの負担がありそうですが、ちゃんと早めに歩いてくれると思います。
それからお家の方は毎日ご面会に来られます。
もう退院間近です。
桜の咲く頃には、小名木川をゆっくりとなら散歩できるのではないでしょうか。