日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

ちょっとだけ太りましたね -僧帽弁閉鎖不全症-

朝の太陽の光を浴びてみる。そうすると脳が起きる。そんなことだったと思いますが、最近はそうかもしれないと思い始めています。シャッキリとではありませんが、ゆっくりとトルクが上がって行くような、そんな印象です。

少しころっとした小型のワンコが来院しました。

息が荒い。食事を取らない。と、言うことでした。

心臓の病気で薬を飲んでいる子です。心臓の病気の悪化によるものだと考えて、まずは検査の前に注射をしました。その後すぐにレントゲン検査を行ないました。

肺水腫でした。

これは心臓の病気が悪化することで、肺に水がしみ出してくるものです。よく肺に水が貯まるなどと言われるようですが、僕の印象としては、肺が水を含む、そのように思っています。コップに水が入るようなものではなく、どちらかと言いますと、スポンジが水を含んだようなものです。

これを治療するのは利尿薬です。

尿として水を排出します。はじめに注射で入れた薬です。

ワンコはハアハアと紫色の舌を出して息があがっていました。

お母さんはとても心配されるか方ですから、どうしたらよいか途方に暮れていました。

僕が予想できることはとりあえずお伝えしなければならないので、良いことも、そしてもしかしたらを考えなければならないこともお話ししました。

入院しての治療が必要ですから、その旨もお伝えし、酸素を調節できる部屋に入ってもらいました。利尿薬がちゃんと効けば、排尿が見られるはずです。

見られなければ、何回か注射が必要です。

治療方針は診断名が決まれば決まります。

診断名を決定するためにはいろいろな検査が必要です。

検査も無数にあるわけですから、どの検査を選択するべきかは、問診や症状から判断する必要があります。

そうしてたどり着いた確定診断であれば、治療すべきことはほぼ決定します。あとは、それぞれのワンコの状態で加減すべきこともあります。

お話の後で、お母さんは心の裡の狼狽をどうにか制していらして、入院に同意をいただき、お帰りになりました。

お母さんのお気持ちは、もしかしたらこのまま病院から帰ることなく最後の日を迎えるかも知れないという不安でいっぱいだったと思います。

点滴をしたり薬を注射して、酸素の部屋に入ってもらって、安定するかを観察しました。

はじめに期待する反応がありましたので、治療を継続し、検査で改善も確認し、どうにかこのまま安定するだろうと思えるまでおおよそ5日間かかりました。

お家ではおやつだけで育った子です。

ドッグフードは食べたことがありません。

それでも、入院中はしかりとドッグフードを食べてくれるようになりました。

退院のお話をすると、それまで1日1回は入院から毎日面会に来られていたお母さんは、もう少し、もう少し、と入院を希望され、最終的には退院可能のお話をしてから1週間ほどの入院管理になりました。

とっても元気になって、食べたことのないドッグフードまで食べるようになってくれて。

お母さんも喜んでくださいました。

それから定期検診に来られまして、体重を測りますと、わずかですが増えていました。

おうちではどうしてもおやつだけをあげてしまわれるようで、まあ、ここは改善を強いるところではないと思っていますから、体重の増加は病態から考えますとよいことですので、お母さんと一緒に喜んでしまいました。

やるべきことを見極める。でも、それに反応してくれる子と、反応が見られない子があります。

いろいろな側面からその原因に迫るわけですが、生きるもの、どこかでお別れはあります。

特に最後の時期に、心穏やかに過ごしていただくためのお手伝いが少しでもできればなと、そう思います。

微力ですけど。