犬の子宮蓄膿症
晴れましたね。
隅田川の流れと佃の方に広がる青空がきれいな朝でした。
ちょうど1週間前です。
小型のワンちゃんが来院しました。
かわいい女の子です。
食欲はあるのですが、陰部から膿のようなものが出ています。
普通はこの段階で子宮蓄膿症と診断するのですが、今回は様子がいつもと違いました。
外陰部の中の方に何かできています。
硬いできものです。
そしてお腹の中を超音波(エコー)で見てみますと、子宮の壁もかなり厚みをもっています。
腫瘍だろうと考えまして、いろいろと検査をしました。
結果は子宮蓄膿症と膣の腫瘍。
統計的にここの腫瘍は80%ほどが良性と考えられます。
手術を行うことになりました。
飼い主さんには小さなワンちゃんがこれから受ける手術について、できるだけ詳しくお話をしました。
ふと見ますと、飼い主さんのお持ちのバッグに「お腹に赤ちゃんがいます」のマタニティーマークが見えます。
まだそのマークを見ないとわからない感じでしたが、そう遠くないところで、新しい家族が増えるのだとわかりました
腫瘍の方は陰部切開という切開を行ってから、尿道にカテーテルを通して尿道に傷をつけないようにして切除をしました。粘膜の壁に癒着を起こしていましたから、電気メスで止血しながら切除を行いました。
ここは結構出血することもあるのですが、幸いなことに目立った出血もなく切り取ることができました。
縫合が終わると次には卵巣と子宮を摘出するために開腹手術に移りました。
切開を行い、皮下組織を分離し、お腹まで切開を進めます。
かなり膿が充満して大きく膨らんだ子宮が出てきました。
どうにか破けてはいなそうです。
慎重に腹水などを観察しましたが、濁ってはいませんでした。
このような手術は基本的な術式が決まっていますから、特別に変わったことはしませんが、卵巣の取り扱いだけは慎重に行いながら無事に全てを取り除くことができました。
この子には乳腺腫瘍もありましたから、3つの手術を同時に行うことになりました。
無事に終わりましたが、思うのは、この子が無事であることと、飼い主さんは妊婦さんですので、精神的な負担は良くないだろうということですね。
今回の手術はもしものことがありえた訳ですから、とにかく慎重に進めました。
無事に退院を迎え、飼い主さんもワンちゃんも喜んで帰って行く姿を見て、初めてホッとすることができました。
嬉しいというものではありませんね。
一つ責任を果たせたのではないかという安堵でしょうか。
この仕事はその繰り返しだと思います。
また一つ、そしてまた一つ。
果たさなければならない責任があります。
それが皆さんの安心になれば、と願いながら。