日本橋動物病院だより

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難しい病気 - フェノバルビタール反応性唾液腺症 –

お知らせがあります。
明日の1月30日(土)の午後の診療は園田に代わりまして、岸田獣医師が担当させていただきます。
<1月30日土曜日>
午前 9時から12時  担当 園田
午後 5時から8時  担当 岸田
翌、日曜日には園田が終日診療をいたします。
よろしくお願いいたします。

去年の末に小型の可愛らしいワンコが来院しました。
もう何年も前からのお付き合いがある方からのご紹介でした。

吐いたり、食欲にムラがあったりが続き、
近くの動物病院でいろいろな検査を受けたということでした。

バリウムを飲んだり、血液の検査、レントゲンの検査、などなど。
それでもよくならないということで、ご紹介されたということでした。

飼い主さんはとても明るい方で、ワンコも同様に大変に可愛らしい子でした。
ワンコはいろいろな辛い症状があるはずでしたが、くりっとした大きな目でいつもキョトンとしています。

僕もまずは基本的な検査を行いました。
考えられることと、主な症状から、治療を開始しました。
しかしながら、なかなか思うような良い反応が見られません。
そうしているうちに、すぐに年末となりました。

年末年始は少しばかり東京を離れらえれるとのこと。

そこでお電話を頂戴いたしました。
年末年始を使って、お出かけされている先からでした。
吐き気がなかなか治らないので、近くの動物病院を受診したいということでした。

年始に東京に戻られて、再開したワンコは…。
下顎が大きく腫れていました。
お話を伺いますと、お出かけ先の動物病院で麻酔をかけて口の中を詳しく検査をされたとのこと。
その頃くらいから腫れてきたということでした。

下顎の腫れこと、嘔吐のこと、食欲にムラがあること、唾液が多く出ることでグフグフといつも口の中に違和感を感じていそうなこと、一時的に呼吸が苦しそうになり、舌の色が変わること。
これらの症状が一つの病気からなのか、幾つかの病気の組み合わせなのか。

普通は一つの病気から起こる一連の症状のはずです。

下顎から首にかけての腫れ、呼吸のこと、嘔吐のことを調べるために、CT検査を行いました。結果はわずかな異常が数箇所に見つかりましたが、今回の病気を特定するようなものではありませんでした。

幸いにもワンコは食欲にムラがありますが、食べる時には本当によく食べてくれます。
大きなドライフードもカリッ、カリッと食べる姿はとてもかわいいものです。
そのような中で、食べなくなってしまったと連れて来られました。

点滴を行ったり、症状の観察を行う目的で数日の間入院してもらうことになりました。
飼い主さんはCT検査にしても、入院にしても、とてもよく理解していただき、なかなか治療に反応がない中でも、すべてをお任せしていただきました。

その3日間の入院中の様子から、いろいろと考えることがありました。
初日、いくらか強く効く吐き気止めを注射しましたが、それでも吐きます。
食べるようになってくれて、ドライフードをいつものようにカリカリと食べますが、しばらくするとげーっとなります。

この薬が効かないとなると…、もしかするとCTでは捉えきれないような異物が胃の中にあって、それが問題を起こしているにではないだろうか。
そうすると、下顎から首にかけての大きな腫れはどう見ても唾液腺嚢腫だけれども、普通はその病気ではあまり腫れないはずの唾液腺が硬くしかも両側腫れているのはおかしい。

そこで調べてみますと、フェノバルビタール反応性唾液腺症というものがあります。
いくつかの報告を文献で見てみますと、症状はほぼ一致しますが、一つだけ、その病気では唾液腺嚢腫が起こってはいないようです。
唾液はたくさん出るのですが、下顎や首のところが腫れません。

僕の考えは、フェノバルビタール反応性唾液腺症に伴う唾液腺嚢腫というのが結論でした。
単なる唾液腺嚢腫でも両側どちらが腫れているかがわからないことはよくありますが、本来はどちらかだけの問題です。
しかし、この子は両側の下顎腺が硬く腫れています。

唾液が多く出るという症状は初めからずっとありますが、下顎や首のところが腫れたのはしばらくしてからです。
通常は右か左の片側に起こる唾液腺嚢腫ですが、この子の唾液腺は両側が硬く腫れています。

フェノバルビタールという薬で唾液の量は減る可能性がありますが、腫れは引かないでしょう。

そのような訳で、手術をすることにしました。
ことの次第を飼い主さんに説明しましたが、稀な病気ですし、初めになかった腫れに注目した解決策は理解しづらいものではないかとも考えます。

飼い主さんからは全面的にお任せいただいていますが、これまで結構な時間が経っていますし、これで最後にしなければならないという気持ちで手術計画を立てました。

下顎腺と舌下腺という唾液腺を両側取り除きます。
硬く腫れた下顎腺を取り除き、その後で舌下腺を取り除く。
それを左右で行いました。

手術から1日、2日と過ぎるに連れて、下顎から首の腫れがどんどんと小さくなって行きました。そして吐くことがなくなり、食欲も安定してきました。

もう心配がありません。
すでに退院しましたが、手術後の抜糸はまだこれからです。
そろそろ来院の予定です。
今は再開が楽しみでなりません。

かなり考えて診断を行い、治療することになりましたが、飼い主さんのお気持ちにお応えすることに必死でした。
少し痩せてきていたワンコ、ふっくらとしていてくれるといいのですが。