日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

海岸線がきれいな街に行ってきました。

連休はよい天気でしたが、今日はまた少し雲が増えてきましたね。

連休の9月22日と23日は泊りがけで出かけてきましたよ。
22日に数件の外来を診て、それから出発しました。
行き先は千葉県鴨川市。
鴨川シーワールドがあるところです。
僕の目的地はそこから少しだけ車で移動するところです。

僕が獣医師になって5年が経った頃、当時の動物病院の院長から東京に分院を出すからそこで分院長をしないかと提案がありました。
仕事を始めたのは京都で、そこで5年間を過ごしました。
生まれは九州ですので、東京というところはどこかに行く途中に通過したり遊びに出かけたりしたことはありましたが、住んだり仕事をしたりいう考えは全くないところでした。

そこで分院長。
まだ獣医師として5年だけの経歴しかない頃です。

そのときにとてもお世話になった方があります。
お孫さんがあってもおかしくはない頃の男性です。
当時猫さんをよく連れて来られていました。

ある日「先生、菊の花いる?」と言われました。
ちょうど分院の入口が寂しいと思っていましたから、欲しいですとお伝えし、小さな菊の花があれば少しはいい感じになるかな?などと思っていました。

そこに持って来られたのは、僕の背丈ほぼどの菊がたーくさん。
動物病院の入口の扉以外のスペースに全て。
菊の花がズラーッと並びました。

正直、少し戸惑いました。
とても立派な菊ですが、お供え用のお花の印象がありますので、それが入口スペース以外に並んでいますので、何かの行事でもあるのかと思わせるものになりました。

それを皮切りに、そのお父さんは数年間に渡り入口に花が途切れないようにしてくださいました。
花が痛んでくると新しい花、そしてそれの鑑賞期間が終わるとまた違う花といった具合に1度も途切れたことがありませんでした。

これを全てご厚意でやってくださいました。
今の動物病院とは違い、そもそも僕は雇われの分院長です。
そのご厚意に対してできることも僅かでした。

そして僕が今のところに独立をする、ちょうどその頃に鴨川の方へ新しくお家を構えられ、引っ越して行かれました。
長年大変大変お世話になったにも関わらず、何のご恩も返せずにいました。 

そのお父さんにはご兄弟がありまして、妹さんにときどき自宅近くでお会いします。
この妹さんもよく猫さんを連れて来られていました。
お会いするときは僕が自転車に乗っていたり、横断歩道ですれ違ったりで、ごあいさつをするくらいでしたが、1月ほど前にお会いしたときに、少しだけゆっくりと立ち話をすることができました。

お兄さんはお元気ですか?
当時街に住む方々にとって、あの動物病院の前のお花は話題だったようです。
とても立派でしたから当然のことだと思います。
地域の方々によくしていただくのも、あのお父さんが懸命に応援してくださったからだと思います。

元気ですよ。
年をとりましたけどね。
よかったら鴨川に遊びに行ってみてください。

そう聞いて、できるだけ早くに実行してみようと思いました。
なかなか時間が作れませんでしたが、今回は思い病気の子が少なくなっていましたから、このタイミングを逃すと次は難しくなるだろうと考えて、鴨川行きを決めました。

何だか大袈裟ですが、僕にとっては1泊2日の旅はとてもとても貴重です。

東京から電車で2時間。
鴨川の駅に降り立ちますと、改札のところで、待っていてくださいました。

先生ー、印象変わったね。
休日にはよくメガネで過ごしますので、そのせいのようでした。
僕もそれなりに年をとりましたね。

8年ぶりの再会でしたが、お父さんは何も変わっていないようでした。
はじめはごあいさつだけして、あとは旅館でのんびりと過ごそうかと思っていましたが、車でいろいろなところに連れて行っていただきました。

次の日も、朝に旅館に迎えに行くからね。と言ってくださって、鴨川を出る2時の電車に乗るギリギリまでいろいろなところを案内してくださいました。

ぼーっと海を眺めたりもできましたし、漁師町の雰囲気を堪能することもできました。
街はどこに行っても波の音が聞こえてくるような、そんなところで、東京の喧騒を離れて、久しぶりのオフを存分に楽しむことができました。

何となく忘れかけていた、スローな生活を思い出すことができました。
また東京に戻ったら仕事を頑張ろう。
人と人のつながりを大切にしよう。
そう思いながら帰路につきました。

結局仕事人間なのかも知れませんが、休まないとよい仕事は難しいかも知れないなと思う休暇でした。

また行きたいと思っています。
なかなか泊まりでは行けませんが、日帰りでもいけるところです。
のんびりとした時間が恋しくなったらすぐにでも。

よい出会いに感謝しています。