日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

姉妹のワンコ

連日の猛暑。
外に出ますと、すべての室外機が稼働してるのではないかと思えるほどの、ちょっと変わった風が吹いています。
7月も今日で終わりですから、本格的な夏はまだまだこれからでしょうか。

家族であるどうぶつ、多くはワンコでしょう、いろいろな向き合い方や暮らし方があると思います。
当院をご利用の飼い主さんの中に、姉妹の小型のワンコを飼われている方があります。

僕がまだ独立する前に、他の動物病院で仕事をしていた頃からのお付き合いです。
新しく構えた動物病院は、その飼い主さんのお家から結構離れてしまいました。
ときには電車に乗って、ときにはご家族の運転される車に乗って来院されます。

昔はね、あの辺りはこんな風景だったのよ。
そのようなお話を今でもときどき聞かせていただきます。
電車の駅ができて人が増えてきたから、寂しかった街が賑やかになって。
そのような昔話を聞かせていただくのが大好きです。
診療の合間のわずかな時間ですし、毎回お話されるわけではありませんから、小さな断片のようなお話がたくさんあります。

そのお母さんが一緒に暮らしていらっしゃる姉妹のワンコはそれぞれ10歳を過ぎていて、まだまだ元気ですが、少しずつ体に年齢の影響が出始めています。

ほぼ2週間ごとに処置をしたり、血液の検査をしたりといった治療を行っています。
そしてこのお母さんはいつも姉妹のワンコのかわいいところ、好きなところ、感心するところをお話をされます。

診察台で処置を受けているワンコを満面の笑みでながめながら、この子はとってもいい子でね。とか、すごく賢い、頭の良い子なんですよ、とか。

もしワンコがご自身のお子さんだったらと考えたりすることがあります。
うちの息子はとってもいい子でね。とか、すごく賢い、頭の良い子なんですよ、なんてはお話さないでしょう。
ワンコだから、いろいろな自慢話をストレートにお話しできて、それがとても嬉しそうに見えます。

このような姿を見る度に、家族どうぶつならではのことなのだろうと、気持ちが温かくなります。
無条件にそのかわいさ、好きなところを表現できる。
このような対象は少ないはずです。

お母さんはいつも元気ですが、その秘訣はきっとこの子達がいつも一緒にいるからではないだろうかと思います。

おおよそ1か月ごとに行う血液検査でも、毎回の検査結果がとても心配のようです。
来院されるときには笑顔でいろいろなお話をしてくださいますが、血液検査の結果をお待ちいただき、結果のご報告をお伝えするときだけとても不安そうなお顔をされます。

幸いにいまのところ良くない結果をお知らせすることはありませんが、大切に大切にされている様子が大変にわかりやすく、こちらも笑顔になってしまいます。

そしてこのことは、決してこの姉妹に限ったことではなく、多くのご家庭である姿なのだと思います。
とてもわかりやすく表現される方と、そうではない方があると思います。
そこには家族であるどうぶつ達への共通の想いがあるはずです。

かけがいのない、生まれてからお別れまでをおうちで過ごすこの家族達です。
ヒトの家族のように、自分でできることが限られています。
トイレ、お散歩、お出かけ、食事。
その程度は様々かもしれませんが、いろいろとお世話しなければなりません。
だからこそこんなにもかわいいのかも知れません。

ヒトと同じ言葉を話すことはありませんが、目や表情でいろいろなことを伝えてくれます。
できるだけ長く、一緒にいられますように。
本当に。