日本橋動物病院だより

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夜中の緊急手術 -胃拡張・胃捻転症候群-

青空がとてもとてもキレイな日になりました。
熱中症には注意してください

夜の診療が終わって30分ほどしたところで、電話がなりました。
飼主さんが帰宅されると、15歳のワンコがチョコレートを大量に食べて動けなくなっているとのことでした。
すぐに来ていただきました。
近くにお住まいなので、15分ほどで到着されました。

思っていたよりもぐったりとしていて、立つことも動くこともできそうにありません。
触診をすると、胃がかなり大きくなっているのがすぐにわかるほどでした。
「吐きたそうにするけど吐けない」

飼主さんがそう言われたところで、よくないことが起こっていることは明らかでした。
胃拡張は間違いない、もしかすると胃捻転も。 

レントゲンを撮ると典型的な像がみられました。
胃拡張・胃捻転症候群は緊急手術が必要です。

飼主さんにお話をすると、15歳の、このぐったりとしている子がそんな手術に耐えられますか?と涙ながらに聞かれました。
ここはしっかりとお伝えしなければならないところです。
何もしなければおそらくは朝まで持ちません。
しっかりとできるだけのことをしますから。
そう約束して手術をすることになりました。
看護師は診察室での話を聞いていてくれて、僕が診察室から出てくるとすでに手術の用意を始めていてくれました。そのおかげで到着から15分ほどで手術を始めることができました。

まずはすぐに胃切開が必要です。
胃にメスをいれると、シューッとガスが抜けてお腹のほとんどを占めていた胃が小さくなっていきます。
ここからは胃の中身をできるだけ出さなければなりません。
吸引機を使って液体を吸引しようと試みましたが、全く吸えません。
粘稠性が高く、チョコレートだけではなくアーモンドや包み紙もあったので、すぐに吸引機が目詰まりを起こします。

何度も何度も吸引機の目詰まりを解除しながら胃の中の物を慎重に取り出しました。
かなりの時間がかかりましたが、はじめの段階で胃の捻転と拡張はすでに解決しているので、ここからは命の危険のない状態での作業でした。

すると、チョコレート、アーモンド、包み紙の他に大人の拳ほどの毛糸のような塊が出てきました。
もしかするとこれが胃拡張・胃捻転症候群を引き起こした元凶ではないかと考えられました。

できるだけきれいに洗浄してお腹を閉じました。

ワンコは麻酔からの覚めが少し遅めでしたが、しっかりと覚めてくれました。
そこで飼主さんにお電話してご報告です。

まだ辛いお気持ちでいらっしゃると思いましたが、無事に手術終了したことは朗報だったと思います。

点滴を続け、朝までには立って歩けるようになり。
そして水のちゃんと飲めるようになりました。

遅くの緊急手術にも係らず、迅速に動いてくれた看護師達にも本当に感謝です。
この手術ができる獣医師は大勢いますが、うちの看護師のように動ける看護師さんはそう多くはいません。
彼女達が救ってくれたようなものです。

ちょうどその日は動物看護師の学校から1名、国立の獣医大学から1名の実習生がいました。 
うちの看護師さん達すごいでしょ?
そう聞きますと、二人ともうなづいていました。

今日は手術から2日目です。
おかゆ状の食事をとることができるようになりました。

飼主さんもご面会に来られて安心された様子でした。

もう少ししたら早めに退院しようね。
とっても元気になりそうだから。