不妊手術
水天宮前通りの街路樹のサクラが咲き始めました。
週末は気温が上がるとの予報ですので、一気に開花が進むのではないかと期待しています。
今週もいろいろと手術がありました。
その中で特徴的な手術がありました。
お一人目(1匹目)は、とても小さなワンコです。
1週間ほど食欲がなく、少ししか食べないとうことで来院されました。
お腹をさわるとかなり膨らんでいましたので、超音波検査、いわゆるエコー検査を行いました。
ほぼ瞬時にわかるほどの子宮蓄膿症です。
食事をとらなかった時間から考えますと少し時間が経っていたのかも知れません。
午前中に来院され、そのまま午後には手術を行い、卵巣と子宮の摘出を行いました。
とてもかわいがられているワンコで、飼主さんもとても心配されていました。
子宮蓄膿症は命に係ることがある病気です。
幸いにもこれまではみんな元気に退院できていますが、そのような情報はあまりにも楽観的すぎると考えておりまして、飼主さんに安心してもらうことができる段階までお話を控えています。
危ないこともあるというのが正しいことですので、インフォームドコンセントのところではよいこともよくないことをお話をしています。
手術手技はシンプルですが、炎症を起こしてもろくなった子宮であるとか、卵巣の周りの脂肪の付き方でその部分の処理で出血が多くなる可能性もありますので、2つとして同じ手術はなく、全てに個々のやり方を求められます。
一人目のワンコは細菌性の腹膜炎がありましたが、抗生物質が効いてきて、そろそろ退院できそうです。
二人目(2匹目)のワンコは大人の拳よりも大きな腫瘍が胸にあり、手術前の診察でこれが乳腺に起こる腫瘍で全部で4つあるということがわかりました。
なかなか来院ができなくてデキモノが大きくなってしまいました。
飼主さんは言い辛そうにお話しくださいました。
全身麻酔をかけて慎重に少しずつ剥離していきました。
思ったよりも多くの血管が入り込む腫瘍だったために予想していた時間よりもかかりましたが、術後の出血もなく翌日の退院では走って帰っていけるほどになりました。
飼主さんもその姿に笑顔をみせてくださいました。
この子は以前に不妊手術をしたのですが、そのときに卵巣がかなり大きくなっていて、検査の結果良性ではありましたが腫瘍化していました。
その手術はある程度お年をとってからの手術でした。
そして今週3人目(3匹目)のワンコはまだ若い中型の子です。
飼主さんが、腰を痛めたのだろうか(椎間板ヘルニアか)、元気がない。
そう言って連れて来られました。
いつもはお散歩にでかけてしばらく歩かないと排泄がないのに、今日は外にでるなりその場でしてしまったとのことでした。
これはトイレが近くなっていることが考えられます。
もちろん、それだけで決め手にはなりませんが、診断のためにヒントになることかも知れません。
はじめにお腹の超音波検査をしました。
恐れていた子宮蓄膿症でした。
子宮蓄膿症は陰部から外に膿がでてきることと、出ていないことがありますが、今週の二人はどちらも外からはわからないタイプでした。
当然のことながら、みなさんご自身のワンコをとても大切にされています。
命に係る場面では特別に大きな動揺があるはずです。
3人目のワンコの飼主さんも椎間板ヘルニアかな?と思って受診され、それが大きな病気であると伝えられ、さらには手術が必要で、しかも命に係ることもあると言われたわけですから、平静を保つことはまず無理な場面でしょう。
僕がよく意識することは、飼主さんのお気持ちやお考えと、獣医師という専門的な見方でものを見た場合との違いがある場合、違いがあるのが普通ですが、その差をそっと埋めることです。
できるだけここはそっと埋めることを心がけます。
しかも、できるだけ僕が変化に気づいた段階で、できるだけ早くに。
しかし、今回はその差を埋めるために十分な時間をとる余裕はありませんでした。
検査、診断、治療を一気に進める必要がありました。
飼主さんは目に涙を浮かべながら、これから始まる夜の緊急手術に向けてワンコを委ねてくださいました。
手術は順調に進んで行き、特別に想定外のこともなく終わりました。
緊急手術をしなければならないくらいの大きな子宮でしたので、もし翌日まで持ち越していたら子宮が破裂していてもおかしくはありませんでした。
無事に皆回復に向かっていて、またこれからもそれぞれの飼主さんと一緒に楽しい生活に戻れそうです。
やはり思うのは、不妊手術についてです。
この子達は、もし生後1年未満で不妊手術を受けていたら、おそらくはこのような手術を受けることはなかっただろうということです。
だからやりましょう!ということではなく、不妊手術をするかしないかは、誰もが一度は考えるところだと思います。
その選択のときに、このようなことも検討していただけるように気をつけてお話をしていかなければいけないのだろうと思いました。
とにかく、みんな元気に回復に向かっていることが何よりです。