次の日曜日(10月19日)は
台風が去って、きれいに晴れましたね。
秋晴れの青空がとても気持ちのよい朝になりました。
お知らせがあります。
10月19日(日)は通常どおりの診療日ですが、午前の診察時間に園田が不在です。
代わりの獣医師が診療を担当いたします。
午後の診療開始までには戻る予定です。
犬猫の診療という仕事 -2-
まだ獣医師
として仕事をはじめたばかりの頃のことです。
勤めていた動物病院に出入りされていた業者さんに言われたことがとても印象深かったのを覚えています。
その業者さんは白衣などのクリーニングをお願いしているところの配達係の方でした。毎週きれいに糊付された白衣を届けてくださっていました。
僕よりも5つ以上は年上の女性でした。
毎週の配達ですので、何回も挨拶をしたり、少しだけ会話をしたりという機会がありました。
ある日のことです。
少し怪訝そうな顔で言われたのは、「動物が何を話しているかわかるのですか?」ということでした。
おそらく深い意味はなく、純粋に言葉のとおりの質問のようでした。
動物病院という仕事に対する、あるいは獣医師というものに対する素朴な疑問だったと思います。
まだ獣医師としての仕事をはじめて間もないところでしたが、このような思いの方がいらっしゃることは新鮮な驚きでした。
当然ながら、この方はどうぶつを飼ってはいらっしゃらなかったはずです。
言葉が通じないどうぶつをどのように診察するのか?
どこが痛いとか、どのように具合が悪いかとかをどのように診るのか?
もしかしたら人間側の勝手な思い込みで診療と称して医療行為のようなことをやっているのではいだろうか?
そのような気持ちも伺える表情もありました。
もしかしたら、このあたりはまだ言葉を話さないヒトの赤ちゃんの診療と似ているところがあるのかも知れません。
僕の場合は客観的な証拠というものを積み上げていく作業を行います。
足を引きずるワンコを連れて来られたとします。
痛そうに「見えます」。
しかしまずやるべきことは、まずは痛いのか痛くないのかを知ることです。
見て、触ってからです。
指の関節から1本1本触って、伸ばしたときと曲げたとき、そして少しだけひねったときの様子をみます。
おかしいな、もしかしたら痛いのかな?と思ったら逆側もみます。
逆側は触られても何ともないのに、引きずっている方はまるで「やめてっ!」と言ってるかのように足を引っ込めるような仕草をする場合には、このあたりが痛いのかもしれないと仮に判断しておきます。
次にレントゲンなどを使って検査をします。
異常がはっきりとわからない程度のこともあります。
そのときには引きずる程度によっては痛み止めを使うこともあります。
痛み止めを使ってみてから引きずることがなくなれば結果として痛かったのだろうということがわかることもあります。
このようなときに考えられるのは次のようなことです。
1.足の裏の皮膚の炎症が強くて地面につくと痛い
2.指、関節、などの骨の痛みがある(一時的なねんざなど)
3.膝の関節が脱臼している
4.股関節が脱臼している
5.膝の靭帯が痛んでいる
6.腰の神経に痛みがある
7.後ろ足に大きな毛玉があって歩く時に違和感が強い
8.足の裏に何かが刺さっている(釣り針や小さなトゲやガラス片など)
9.骨折がある
10.爪が折れていたり、傷ついている
などなど
このようなことから可能性あり、可能性なしと分けながら絞り込んでいきます。
言葉が話せなくても、しっかりと診断にたどり着けます。
ひとつひとつをお話しながら解決へ向かって行く作業は、ときに飼主さまの不安を徐々にではありますが、取り除くことにつながります。
もちろんワンコの症状が改善すればそれが一番の安心になることは間違いがないことです。
言葉が話せるとかなり早くに診断ができそうですが、この地道な作業もとても大切なことです。
客観的な証拠を少ずつ積み上げながら。
もう10年以上も前のことなのに。
ときどきなぜか思い出す。
そのくらいに印象深い言葉でした。