このまま様子を見ようとしましたが – 犬の乳がん –
台風接近中ではありますが、ジリジリと暑いですね
木陰はまだ大丈夫ですが、日向には長くは出ていられそうにありません
昨晩のことです。
初めて当院にいらっしゃる方が小型のワンちゃんをお連れになりました。
シニアという年齢になっている子です。
詳しく調べるまでもなく、お腹に大きな腫瘍が見えています。
体重が3kgもないのに腫瘍はゴルフボールほどの大きさがります。
明らかに乳腺腫瘍です。
飼主さんはこれまでかかりつけの動物病院でこの腫瘍についてのお話をされたことがおありのようでした。
無理に長生きをさせようという考えがなかったとのことでした。
腫瘍は見てすぐにわかるほどの物。
わかってはいたけれども、手術をして取り除くことはお考えではなかったようです。
しかし、腫瘍の表面が破けてしまい、出血をしています。
これを見てやはり手術をして取り除かなければと思われたようです。
僕も同じような場面でよく手術をしたくはないというお話を聞くことがあります。
そのような時に、今後どうなるかをお話しするようにしています。
その中で欠かさずにお話しすることは、腫瘍が大きくなること、そして表面が破けて出血するようになることです。
出血が始まりますと、毎日拭いてあげたり、ガーゼなどを当てて手当をしたりがその後ずっと続きます。
特にこれからの夏の時期には化膿の心配もしなければなりません。
その上で何もしない選択をされた場合には、乳がんの表面が破けて出血したらできるだけの手当をしましょうねとお話しています。
そこまでに至っても何もしないことはとても難しいことです。
ジワリジワリと続く出血をそのままにしてお家の中で生活をすることは大変なことです。
飼主さんは手術を強く希望されました。
はじめて来院された動物病院で、これまでやらないと決めていらっしゃった手術を希望されるのはそれなりの覚悟がおありのようでした。
できるだけ早い方が良いと判断しましたので、翌日(本日)行うことにしました。
大きな腫瘍ですが、シニアとは言え、まだまだこれからです。
きれいに取り除いて快適に過ごせるとよいと思います。
麻酔の前の検査を行い、肺に転移などがないかをレントゲンで調べ、身体検査をしてから麻酔をかけました。
ゆっくりと麻酔薬が効き始め、すっかりと効いたところで手術を始めました。
大きな動脈があるところです。
慎重に慎重にすすめました。
数年前ですと早さを求めていた頃もありましたが、最近では早さだけではなく慎重さをとことん考えて手術をしています。
乳腺腫瘍の手術でワンちゃんを亡くされたお母さんから相談を受けたことがありました。僕の中では乳腺腫瘍の手術で亡くなるということのイメージがありませんでしたが、そのご相談を受けてから、明日は我が身というわけではありませんが、慎重すぎてよくないことはないのだからと、これまでよりもとにかく丁寧に手術をするようになりました。
最近は電気メスのデメリットも意識しています。
麻酔中は血圧が低めですので、全ての出血を電気メスで止血できても、術後に血圧がもどるとわずかながら出血がみられることもあります。
そのような出血は自然に止まる範囲ではありますが、想定と異なる事態はできるだけ避けたいと考えています。
今回のワンちゃんにも電気メスは使う訳ですが、重要なところは型どおりに血管を糸で結んで止血しました。
術後の想定外をできるだけ減らしたいと考えましたので。
今はすっかりと目が覚めています。
そして出血も見られていません。
一晩は観察することにしています。
飼主さんは、このワンちゃんの大きくなっていく腫瘍を見ながら心を傷めていらっしゃったはずです。もうそのような心配はありません。
また以前のように過ごすことができそうですよ