今夜は二人っきりのように
今日はとてもよい天気ですね。
寒空ではありますが、初夏の雨上がりのような日差しが受け付けの床に反射しています。
薄着で外に出る勇気はありませんけど。
小さなワンコのお話です。
とても小さなワンコを連れて来られました。
そのワンコのご家族はお母さん、お父さん、そして就学前の小さなお子さんと、ベビーカーの中の赤ちゃんです。
ワンコはかかりつけの動物病院があったようですが、お父さんのお帰りを待っての診察では診察時間に間に合わなかったとのことで、うちに来院されました。
とても痩せていて、普通に歩くことができません。
原因はいろいろなことが考えられますが、栄養面で補助をしていかなければならないのは確実でした。
身体検査に時間をかけて、問診でもいろいろなことを教えていただきました。
ある程度このあたりに異常があるのではないかと考えながら血液検査とレントゲン検査をしました。
血糖値がとても高く、この数値だけを見ますと、糖尿病と判断してもよいくらいでした。しかしながら、一時的には糖尿病に見えても、とても糖尿病だと判断するにはワンコの状態が悪すぎます。
激しい脱水、痩せすぎた体型、歩行不能。
まずは普通の栄養状態をつくってみることにしました。
ご家庭でのケアには限界があり、毎日の通院も困難とのことでしたので、3日間ほど入院することになりました。
食事を与え、脱水を補正し、栄養面の補助を集中的に行いました。
その他に治療しなければならないことがありましたので、お薬も使いながら。
3日間ではありましたが、来院当初よりはかなりしっかりとしてきました。
自分で食事を取れるようになったり、おぼつかないながらもヨチヨチと歩けたり。
インスリンなどの治療をすることなく血糖値も落ち着いてきました。
退院した後も数日おきに通院されました。
毎回ご家族全員での来院でした。
小さなお兄ちゃんは顔がお父さんそっくりです。
お父さんのお顔立ちがとても優しげで、お子さんはその縮小コピーのようです。
はじめは緊張もあったお兄ちゃんも、来院回数が増えるごとにお話上手になっていきました。
まだワンコの状態が安定していない、そんな時、お母さんとベビーカーの赤ちゃんだけでワンコをお連れになりました。
いつもご家族一緒の印象がありましたので、今日はお父さんとお兄ちゃんは?思わず尋ねてしまいました。
その日は赤ちゃんのお宮参りのご予定だったそうです。
お母さん、お父さんのご実家がある関西に全員で新幹線に乗ってお出かけ予定だったとのことでした。
しかしながら、ワンコの状態がまだ不安定なので、行かないことにしたそうです。
そうしたら、小さなお兄ちゃんはおじいちゃんとおばあちゃんに会いにいくのだと、お宮参りの中止がとても辛かったようです。
見かねたご両親は、お父さんと小さなお兄ちゃんだけで新幹線に乗って関西までおじいちゃんおばあちゃんに会いに行くことを決めたとのことでした。
今夜はお母さんと赤ちゃんとワンコだけです。
お母さんはつかの間のお休みをもらったようだと、少し寂しそうでもあり、でも笑顔で、たまにはこんな日もとお話し下さいました。
幸い、ワンコの状態は誰が見ても上向きで、かなりしっかりとしてきました。
これならば、お母さんだけでも安心して看ていることができます。
赤ちゃんがいますが、今夜は二人っきりですね、そう話すとお母さんも笑顔でうなずいて帰って行かれました。
赤ちゃんと、まだ小さなお子さんがいらして、そこにこの小さなワンコ。
お母さんも大変だったと思います。
でも、これからは大丈夫。
通院も必要なくなりますよ。
次の来院で完治と宣言できる予定です。
おそらく次はご家族みんなで来院されるはずです。