日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

耳の奥に -外耳道の手術-

すっかりと秋らしい日になりましたね。

昨晩の雨は寒くて冷たいものでしたから、今日の空模様にはあまり期待をしていなかったのですが、天気予報のとおりになりました。

はじめにお知らせですが、9月22日(日)は院長不在です。
来月も数日留守いたします。

130909_4

10月13日から15日まで3日間、イギリス(UK)で行われますAO研究財団の整形外科コースに参加いたします。17日(木)の午前中には日本橋に戻り、後からの診療を予定しております。

ちなみに、AO研究財団へのリンクはこちらです。

先月、長い間にわたって、外耳炎で辛い思いをしてきたワンちゃんと飼主さんが来院されました。
里親募集で引き取られたワンちゃんで、とてもかわいくて、お手入れも行き届いている女の子です。
元々のかかりつけの先生と来院されました。
耳の奥を見ますと何やらできものが見えます。
これが耳栓のように耳の穴の中に詰まっていて、外耳炎が治らずにいました。
今回はこれを取る手術を希望されていました。

一見耳の穴の手前にありそうですが、奥は見ることができませんので、どのようになっているかは不明でした。
かなり奥には鼓膜がありますが、そこまでいっているのか、あるいは手前で止まっているのか。もしかすると、鼓膜を超えてずっと奥まである可能性もあります。

飼主さんのお困りの点は、まず治らない事、そして特徴的な耳からのにおいが続いていることです。
この腫瘍を取り除くには、耳の穴を切開して広げるという手術が必要です。
外耳道切開をします。

腫瘍がどのように広がっているかを調べるために、まずはCT検査をいたしました。
結果、腫瘍は耳のかなり奥まで続いていて、耳の穴の終点である鼓膜まで続いている事がわかりました。
これは辛かったね。
少しでも耳に違和感があると、始終気になるものなのに、それがずっと続いているのは苦しかっただろうと思います。

CT検査の結果では、かなり奥まで耳の穴を切開して腫瘍を取り除かなければなリません。
耳の穴(外耳道)を全部取る手術もありますが、これだと聴力を完全に失ってしまう可能性があります。
飼主さんと相談した結果、聴力を残す範囲で、できるだけ腫瘍を取り除く方法をとることにしました。

外耳道の手術で気をつけなければならないものは、顔面神経と耳下腺とよばれるものです。
耳下腺はもし傷をつけてしまっても、あとで治すことはできますが、顔面神経を一度傷つけてしまいますと、生涯にわたって顔面神経麻痺が残ります。
顔面神経は耳道の奥の方に近いところにありますから、普通の外耳道切開ではあまり気にすることはありませんが、今回はかなり奥まで切開しますので、間違いなく顔面神経を避けて行わなければなりません。

元のかかりつけの先生から、手術による顔面神経麻痺の可能性を聞かされていらした飼主さんは、そのこともとても心配されていました。
当然のことだと思います。

手術はとても慎重に進めました。
事前にCT検査の結果を見てみますと、できものができている耳道の直径は8mmほどです。
そこにギュッと腫瘍が詰まっています。
少しずつ深く深く耳道を切開していきますと腫瘍が現れました。
できるだけ根元から取りたいので、奥へ奥へと手術を進めて行きました。
耳下腺や顔面神経に気をつけながら。

ある程度の出血もありましたが、しっかりと腫瘍を取りきる事ができました。
ほぼ予定どおりといっていいものでした。

退院の日、飼主さんはかわいいその子の顔を見て、麻痺もなく、あまり違和感のない手術跡を見ながら笑顔でした。
よかった、よかったと何度も言われて。

1週間で抜糸です。
きっときれいな仕上がりになっているはずです。(と、期待しています。)
逆の耳はとてもきれいな子です。
においもない、よく聞こえる耳になりますように。