日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

年末ですね

今年も残すところあと10日間ほど。

水天宮前の通りにも例年どおり提灯がつきました。

当院の年末年始は12月31日(月)から1月3日(木)までお休みをいただきます。
ご迷惑をおかけいたします。
この間も可能な限り急患対応をさせていただきます。

2か月ほど前のことです。

公園を住み家としているネコちゃんが大けがをしているとのことで相談を受けていました。一度見せて頂かないと、なかなか詳しいお話ができませんが、なかなか捕まえることが難しそうでした。

お世話をされている方が、やっとのことで捕まえて、タクシーで運んで来られました。
タクシーの運転手さんに、臭くて次にお客さんを乗せられないとの苦言を受けながら、懸命でした。

確かにネコちゃんは異臭を放っており、明らかに化膿がどこかにあるのだろうと思わせる状態でした。

屋外で生活をしているネコちゃんです。すんなりと診察を受けてくれるとは思えませんでしたし、その後の処置にも麻酔が必要と考えて、麻酔で眠ってもらうことになりました。

麻酔をかけてよく見てみますと、首の後ろから背中の広い範囲に大きな大きな、もう死んでしまっている皮膚がくっついていまして、その下には大きな化膿が広がっていました。

まずはこの化膿しているところの洗浄と、べったりとくっついている壊死した皮膚を取り除く処置を行いました。

驚くことに、これだけでネコちゃんの臭いはほとんどしなくなりました。
先程までいた診察室には、残り香が漂っていましたが、ネコちゃん自身はほぼ無臭になっていました。

さて、治療計画を立てなければなりませんが、これだけ広い範囲の皮膚が失われていますと、どこかの皮膚をもってくる皮弁(ひべん)と呼ばれる方法は困難です。
できる限り縫合して縮めても、範囲が広すぎてほとんどもとの状態を変わりません。

このような傷は乾かしてしまうといけませんから、とにかく湿った状態を保たなければなりません。
保湿が必要ですので、毎日湿ったガーゼを使った治療や、新しい組織が盛り上がってくるようにクリームを使って治療を続けなければなりません。

これを屋外で朝晩毎日行うことは不可能ですし傷にもよくありません。
入院管理で治療をすることになりました。

外ネコちゃんの入院が長期にわたることはあまり良いことではありません。
その後にお家の中で生活ができるとは限りませんし、仮にできたとしても、それがもともと外にいたネコちゃんにとって幸せかは誰にもわかりません。

このネコちゃんの治療にはかなりの日数が必要だということは確かでした。

毎日治療をするうちに、ゆっくりとではありますが、傷口が小さくなっていき、そして少しずつ人にも馴れてくれました。

やっと帰っても大丈夫というところまで回復したのは、入院から1か月半経ってからです。その間に3回傷を小さくする手術を行いました。

予防接種を済ませ、必要な血液の検査も済ませ。

とにかく良い子でした。

外ネコちゃんはなかなかお部屋をきれいに使うことができないものなのですが、この子は本当にいつもきれいにお部屋を使ってくれましたし、食事もしっかりと毎日食べていました。

大きな傷でも丁寧に処置をして時間をかけるとそれに応えてくれるかのように小さくなっていきます。
日々の変化は目に見えるものではありませんが、確実に退院の日が近づいていました。

退院の日を迎え、すっかりとよくなったネコちゃんは、しばらくお世話をする方のお家にいることになりました。

長いようで、過ぎてしまうと短かった日々です。
あのまま外にいたら、今頃はどうなっていたか。
よく見つけて連れて来て頂いたと思います。

すっかりと良くなりました。元気に新しい年を迎えるのではないでしょうか。