椎間板ヘルニア -椎体固定手術-
ここ数日、天気の良い日が続きますね。
おかげでチューリップが咲きましたよ。
まだつぼみもあります。
もう少し楽しませてくれそうです。
今回かなり専門的な話です。
アメリカの神経外科などの研修から帰って3週間近くになります。
帰国2日目にまさに神経外科の手術が入りました。
ダックスちゃんの椎間板ヘルニアです。
実はこのダックスちゃん、以前にも違うところでしたが、椎間板ヘルニアを起こしてしまいまして、手術をしました。今回は前の手術よりも少し上側です。
椎間板ヘルニアは椎間板が飛び出して神経にさわるために痛みがでます。飛び出し方は偏りがありまして、右側から飛び出したり、左側から飛び出したりします。
右側から飛び出した椎間板を取り除くには背骨の右側に穴を開ける手術を行いますし、左側なら背骨の左側に穴を開けます。
以前は左側に飛び出していましたから、背骨の左側に穴を開けて手術を行い、手術後おおよそ3週間目から普通に歩けるようになり、最終的には走ったり飛んだりと、これまでと何も変わらない生活ができていました。
今回は前回よりも上のところで右側に飛び出しています。
飼い主さんはとてもお忙しい方です。
遠くにお住まいですので、来院回数を多くすることができません。
来院時には後ろ足の麻痺が起こって1-2日経っていました。
それでも急を要するものです。
以前のご体験がおありですので、夜の時間外の来院でしたが、このままお預けしますとのことでした。
入院管理が始まり、通常は飼い主さんに行っていただくMRIの検査も当院の獣医師が検査センターに行くことになりました。
手術を行う場合にはMRI検査は欠かせません。画像を見て手術の方針を立てます。
そこでわかったことが前回は左側、そして今回は右側ということですが、一部前回に近いところまで背骨に穴を開けなければならなそうです。
かなり専門的な話ですが、片側椎弓切除術を両側に行いますので、両側椎弓切除術という手術を行うことになりました。そうなりますと、背骨の強度が弱くなります。弱くなりすぎてよくないことが起きることはどうしても避けたいところです。
そこで、おそらくはこの手術を専門医として数多く行っているアメリカのカール先生にメールで質問をしてみました。
両側椎弓切除を行った場合の背骨の不安定性について。
これまで多くの犬でその手技を行ってきたけれども、問題が起こったことはない。との返事でした。
しかしながら、開ける穴の大きさによってはプレートをスクリューを使った固定手術が安全策ではないかとのことでした。
不安を残すことを避けたかったので、両側椎弓切除手術と椎体固定手術を行うことにしました。
SOPというプレートを使った背骨の固定手術です。
きっちりと大小の神経をよけてスクリューを背骨に挿入します。
1週間ほどの入院後の時点ではまだ後ろ足は麻痺でフラフラしていました。
しかし昨日の抜糸の時にはかなり力強く足が使えていました。
まだ自然に歩くことまではできませんが、かなり期待が持てそうな回復です。
飼い主さんの笑顔がとても印象的です。
前の手術のときよりも治るのが早いと思いますとの感想でした。
数年ほど前までを振り返りますと、ここまで高度な手術はもっと大きな病院をご紹介していたかも知れません。当院をご利用の方々には、できるだけ当院の中で十分な治療をさせていただければと考えております。