気持ちの準備
年末年始の診療日のご案内をしています。
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12月31日から1月3日まで休診いたします。
12月30日と1月4日は通常どおりです。
12月4日(土)の午後は院長が不在です。
代わりの獣医師が診療を担当させていただきます。
先日ネコちゃんが来院したときのことです。
飼い主さんは他にもネコちゃんを飼われていまして治療にお連れになったことがあるのですが、今回のネコちゃんは初めての来院でした。
前に連れてきた子と違って暴れます。大丈夫でしょうか。
僕がネコちゃんが入ったキャリーケースを開けようとしたときに飼い主さんはまるで「まだ開けないで」と言うようにそのケースの扉を手で押さえながらそう言われました。
キャリーケースの中からは穏やかなネコちゃんの鳴き声かします。
実際には開けなければわかりませんが、たぶん大丈夫ですよとお応えし、ゆっくりと扉を開けました。
ここはどこ〜?とキョロキョロするネコちゃん。
その後診察をしてお腹をはじめ体のいろいろなところを触診して治療まで終わりました。
終始穏やかで、非常に治療にも協力的なネコちゃんでした。
一番驚かれていたのは飼い主さんです。
ネコちゃんが暴れてかなり手こずるのではないかと心配されていました。
実際に他の動物病院では暴れてしまって検査も治療もできなかったこともあったようです。
日頃は根拠に基づいた検査と治療を心がけていますが、証明不可能な心のこともいつも考えています。
どうぶつは人と言葉で会話することはできませんが、物言わない心と心で会話できているのではないかと思っています。
こちらが緊張して構えてしまうとそれに応えるようにどうぶつ達は反応します。
飼い主さんがとても幸せな時間はその気持ちを共有し、逆にとても落ち込んでいらっしゃるときにはどうぶつ達も気持ちが沈んでいる場面に遭われたこともあると思います。
どうぶつ達の心はまるで環境を映し出す鏡のようなもので、すぐそばにいらっしゃる飼い主さんが緊張されていると、じんわりと肉球に汗がにじんでくる子がいます。飼い主さんだけではなく、僕達どうぶつ病院スタッフが緊張していても同様です。
ことばを使わないコミュニケーションですので、ごまかすことができません。
勢いのあるワンちゃんに見せかけだけではなく、心から余裕を持って接することは実は簡単ではありません。ネコちゃんの場合も同様です。
気持ちだけでも、技だけでもだめな場合があります。
テクニックをもって冷静に慎重に、そして優しく心を保つことを心がけています。
看護士には診察室に飼い主様やどうぶつをご案内する前に、お迎えする気持ちの準備は大丈夫かを確認するように伝えています。
ごまかしの効かない、優しい真剣勝負です。