日本橋動物病院だより

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食道内異物

夜の診療時間があと30分ほどで終わるという頃に小さなワンちゃんが来院しました。
飼い主さんが夕飯の準備中に小さな角切り野菜が床に落ちてしまいました。
それを思わず飲み込んだワンちゃんの具合が悪いということです。
大量の泡を吐き出しながら苦しそうです。
心拍は不安定ですし、舌の色も良くなったり悪くなったりします。
その野菜は害ではありませんので、中毒は考えられません。
どこかに詰まっているようです。
ノドか食道か腸か。
すぐにレントゲン検査でノド(気道)ではないことを確認しました。
レントゲン検査のときにも泡を吐き出します。
まるでトロロ芋を大量に咥えているような感じです。
急変の様子や状態から食道に詰まっていると考えて、そのまま麻酔をかけて内視鏡検査をしました。
口の中も食道も泡でいっぱいで内視鏡の視界がよくありません。
泡を吸い取ったり、空気で食道を少し広げたりしながら内視鏡を進めてみると、野菜の欠片が食道に詰まっていました。
野菜ですので、物としては食べても大丈夫ですから、そのまま内視鏡を使って胃の中に入れました。
ひっかかりがありましたので、少しだけ抵抗がありましたが、ちゃんと動いてくれました。
麻酔からもすぐに覚めて、状態も劇的に改善しました。
むしろ、「何があったの?」と言う感じで、キョトンという様子です。
胃の中の異物はよくみます。
吐かせる処置(催吐)で解決する場合、内視鏡で解決する場合、手術が必要な場合があります。
食道内異物は手術が必要な場合は困難なことが多いですので、今回のように内視鏡で解決して、早くに回復してくれたのは不幸中の幸いでした。
食道内異物は大きさによっては心臓の働きに悪影響を与えます。
おそらくは1時間遅かったら、元気な姿を再び見ることは難しかったと思います。
逆に、ちゃんと治療ができれば元のとおりに元気に過ごせます。
何も後遺症もありませんし、その後の治療も必要ありません。
来院直後に診療を開始したとき、問診や身体検査の段階で、急変の可能性などをお話ししなければなりませんでした。
自然なことですが、飼い主さんの目には涙がありました。
今はぐったりですが、さっきまで元気だった子です。
原因もはっきりとしています。
必ず助かるという思いで、僕も看護士も必死でした。
すっかりと体調を取り戻し、ちょっと近寄ると怒るくらいに元気になりました。
お帰りの時には飼い主さんも僕も看護士も笑顔でした。
これからも元気に過ごせますよ