糖尿病とは
糖尿病とは、インスリンというホルモンが足りなくなって、色々な症状がみられるようになる病気です。
インスリンは膵臓から出るホルモンです。ヒトも犬も、食事をとると食べた物に含まれる糖分が血液の中に吸収されます。そのままですと、血管の中をぐるぐると回るだけですが、インスリンが血液中から糖を組織へ運んでくれます。
回るお寿司に例えますと、お寿司が糖です。ベルトに乗っているというのは、血管の中に糖がある状態です。このベルトの上をお寿司がぐるぐると回っています。手を出して、受け取らないことには、食べることができません。このとき、手の役割をしているのがインスリンです。誰も手を出さないと、ベルトの上にお寿司がいっぱいになってしまいます。これが高血糖です。血糖値とは、ベルトの上(血管の中)のお寿司(糖)の数(量)を数えているわけです。手を出して(インスリンが)、ベルトの上(血管の中)からお寿司(糖)を受け取ると、ベルトの上のお寿司が減ります。これが血糖値が下がったという状態です。
血管の中に正常な量を超えて糖が増えてくるのが高血糖です。それを本来はインスリンが受け取り、血管外に運びます。血管外には、様々な組織があり、組織へ行き渡った糖は、エネルギーとして使われたり蓄えられたりします。
糖尿病の分類
ヒトの糖尿病には、I型とII型があります。I型糖尿病の患者さんは全体の約5%で、II型糖尿病患者さんは全体の約90%とされています。その他の糖尿病には、他の病気によって起こる糖尿病というものがあり、これが全体の約1%、そして、妊娠糖尿病というものがあります。
ヒトの糖尿病で最も多いのがII型糖尿病です。
ヒトのII型糖尿病の原因には、いろいろなことが関係しています。遺伝、肥満、ストレス、運動不足、生活習慣が原因になり、中年齢以降で発症します。
II型糖尿病では、脂肪が増えることでインスリンの働きを妨げる物質が増えます。すなわち、インスリンの働きが悪くなります。これがインスリン抵抗性です。インスリン抵抗性があると、膵臓からインスリンが出ているにも関わらず、糖を受け取るべき臓器が糖を受け取ることが十分にできません。(インスリンの相対的不足)
すると、肝臓では血液中に糖が多く存在するにも関わらず、それが届かないために、糖不足と認識し、新たに糖を作り出そうとします。糖新生と呼ばれます。
すると、さらに体内に糖が増え、これに対してインスリンがさらに出るようになり、でも抵抗性があって、という悪循環が起こります。そして、インスリンを過剰に出し続けた膵臓に、インスリンを出す働きが低下するということが起こります。(インスリンの絶対的不足)
ヒトの糖尿病の約5%がI型糖尿病です。
ヒトのI型糖尿病は、膵臓から出るインスリン量が不足する病気ですが、先に書いたII型糖尿病とは異なり、自己免疫性や特発性で起こります。つまりは、生活習慣によらない糖尿病です。
犬の糖尿病は、ヒトで言うところのI型糖尿病に近いとされ、肥満は糖尿病の直接の原因にはならないのですが、危険因子とされています。他の危険因子には、メスの発情、おやつや偏った食事があります。また、膵炎の後から糖尿病が見られることもあります。
犬の糖尿病は、そもそものインスリン量が不足しますので、治療にはインスリン注射しかありません。
犬の糖尿病
犬の糖尿病は、犬の約0.2%にみられます。症状は、多飲、多尿、体重減少、被毛粗剛、元気消失、食欲不振、などです。
動物病院では、上のような症状に他に、血液検査で血糖値を測定して診断します。血糖値は、空腹の時に測ります。犬の血糖値の正常値は、70mg/dlから140mg/dl程度ですが、数日に渡って数回の測定で180mg/dl以上が続くと、糖尿病と診断します。また糖尿病の犬では、尿に糖が出ますので、これは尿検査で確認します。
犬の糖尿病の治療
犬の糖尿病では、インスリンが欠かせません。また、メス犬の発情後に体内に出てくるプロゲステロンというホルモンは、強力なインスリン抵抗性を示します。これがあるうちには、インスリンを注射しても、高血糖になりやすく、血糖値を安定化させることが難しくなります。糖尿病のメス犬ではできるだけ避妊手術をすることが推奨されます。
食事のリズムを作ることが大切で、食事時間や量によってインスリン量を決めることがあるために、できるだけ食事時間と量は守るようにします。
適度な運動も重要ですが、運動をすると糖が消費されますので、正常値ギリギリで血糖値をコントロールしている場合には、過度な運動を突然行うと、低血糖に陥ることがあります。できるだけ毎日決まった量の運動にすることが大切です。
犬のインスリン治療の目標値
犬の糖尿病では、治療中の血糖値が100mg/dl程度から180mg/dl程度になるようにコントロールします。200mg/dl以上になると糖尿病の合併症のリスクが増えます。
定期的に動物病院を受診して、インスリン量の支持を受けるようにしてください。犬の体重が次第に減少する場合には、インスリン量を減らさなければならないこともあります。