犬の慢性気管支炎
薬があると咳が落ち着くけれども、薬が切れるとまた始まってしまう。そんな咳です。そして、犬は概ね元気です。こんな感じの咳が、他に原因がないのに2か月以上に渡って続く場合を犬の慢性気管支炎と呼んでいます。
治る病気?治らない病気?
高齢の小型犬に多い病気で、空気の通り道(気道)の構造が変化しているために治りません。では治療をどうするか。すっかりと治すことはできない病気ですので、咳を少なくするために薬を飲ませたり、気道の炎症を軽くする、そして、感染症から守ることが治療の中心になります。
どうやって診断するの?
積極的に診断する方法と、消極的に診断する方法があります。
積極的な診断方法
全身麻酔をかけて、気管支鏡検査を行います。そして気管支肺胞洗浄で回収された液の細胞検査を行います。胸部単純X線検査やCT検査では、ある程度の異常所見が見られますが、これだけで診断することが難しいことも多く、気管支鏡検査が最も有効な診断方法です。気管支鏡検査では、粘液分泌過多がみられます。
消極的な診断方法
同じような咳がみられる他の病気を否定(除外)するための検査を行います。特に、心臓の病気は最初に否定(除外)するべきものです。その上で、全てを否定(除外)できたら、犬の慢性気管支炎と診断することになります。
治療
治療は、症状や状態の軽減を目的とします。根治できないことを前提に進めていきます。薬もかなり反応良く効きますから、これなら治ると思われることが多いのですが、薬をやめると早い段階で咳が再発します。
使う薬は、抗炎症薬、気管支拡張薬、去痰薬で、ときに必要に応じて抗菌薬を使います。
犬の慢性気管支炎の咳が、犬の周りに喫煙者がいたり、環境中のにおい、香水、アロマオイルにより刺激されてみられるという報告もあります。もし、咳をする犬のご家庭に喫煙者があれば、犬を近づけないことも検討されると良いでしょう。そして同様に、香水やアロマオイルによっては、咳を誘発することもあるので、香りがあるときと犬の咳の様子を見ながら使用することをお勧めします。
私がよく診る犬の慢性気管支炎は、トイ・プードルに多いという印象を持っています。もちろん、統計的なデータはありません。