動物、犬猫の保険
どうぶつの保険選び、迷いますよね。
検索すると結構な数の保険会社が出てきます。しかしその多くは、私の動物病院では加入者を見たことがない保険会社でした。詳しい数はわかりませんが、2大保険会社とか、3大保険会社とかあって、そこがシェアのほとんどを持っているのではないでしょうか。予想ですが。この記事では、動物病院の獣医師として率直な感想を書いてみます。
大前提があります。
私には、保険をオススメする資格がありません。
これはお勧めではなく、動物病院の獣医師の感想ですので、保険を勧める資格を持たない獣医師の話として読んでくださいね。
ちなみに、獣医師で保険を勧めることができる資格を持っている人は多分いないのではないでしょうか。いらっしゃったら、結構な頑張り屋さんかも知れませんね。
この記事を読むメリット
現役の動物病院の獣医師が考える、保険会社選び知っておいた方が良いことを解説します。
動物病院の獣医師が、保険商品のここがいいのではないかと思うポイントです。
保険金の受け取り方の違い→動物病院の窓口で、受け取ることができる保険会社があります。
保険金申請の方法→飼い主さんは何もしなくても良い保険会社があります。
保険の対象について→ある病気は、保険会社によっては対象ですが、別のところでは対象外です。
保険の更新について→保険料をお支払いし続ければ、毎年更新できると思っていませんか?
保険を使うために飼い主に必要なこと→これがわかっていないと損をすることもありますよ。
保険金の受け取り方ですが、窓口清算ができる保険と、できない保険、そして、できる動物病院とできない動物病院があります。
保険金の受け取り方
保険会社によって、動物病院の窓口清算ができるところがあります。例えば、50%負担の保険に加入されている方が、10,000円の治療を受けられたときの保険金受け取りの流れです。
動物病院の窓口で10,000円の50%である5,000円だけを支払うだけで済む保険があります。人の健康保険のようですよね。
そして、その他には、まずはご自身で10,000円をお支払いしておいて、その診療明細書を保険会社に提出して保険金請求をして、後日ご本人の口座に5,000円が返ってくる仕組みを使っている保険会社もあります。
これは、保険会社によるだけではなく、動物病院でも、この方法を採用しているかどうかも大切です。例えば、A保険会社の保険に加入していて、P動物病院で治療を受けたら、窓口で保険金の清算ができたのに、Q動物病院では窓口清算はしていなかった。ということがあります。これは、Q動物病院がA保険会社と窓口清算の契約を交わしていないことで起こる違いです。
あくまで、保険会社と飼い主さんとの契約は1対1ですので、そこに動物病院が入る余地はありません。関わりがあるとすれば、保険会社の指定する書式で診断書が欲しいと言われることがありますが、それは動物病院が飼い主さんに書く訳で、治療に関しての第三者である保険会社に提出するかどうかは飼い主さんに任せることになります。
このA保険会社とP動物病院のようなところをかかりつけの動物病院とされていると、飼い主さんは基本的には保険金の請求に関しては、必要な手続きはほとんどありません。
保険金請求に関する飼い主さんがしなければならない手続きは、動物病院で診断書や診療明細書などの書類を保険会社に送ることです。そうすると、飼い主さんの指定する口座に保険金の入金がされます。
保険の対象外があります。
保険の対象というものがあります。病気ではないと使えないことがほとんどです。ワクチン接種やフィラリア症などの予防のためには保険金は出ませんし、避妊手術や去勢手術にも使えません。そして、結構大きな違いだなと思うのが、歯科診療についてです。
犬猫の歯科処置には、全身麻酔を使って行うことが多く、金額もそれなりにかかってきます。しかし、予防行為には保険金は支払われませんので、単なる歯のクリーニングは適応されません。犬や猫に多い歯周病ですが、これは使える保険会社と使えないところがあります。ある保険会社は、歯周病治療に保険金を支払ってくれますが、口や歯にもっと重篤な症状がないと保険金を支払ってくれないところもあります。
どうぶつの保険への加入は、当然ですが、病気になる前でないといけません。犬が病気をしてから保険に加入することができないのは、例えば、家が焼けてしまってから火災保険に入ってどうにかしてもらおうとするのと同じです。
保険を継続するときの問題点
保険に加入する前は、どこも悪くはなかった。しかし、保険加入後数か月ほどして、病気になってしまった。しかも、その病気は今後生涯にわたって治療が必要なものだった。とします。保険会社との契約は多くが年更新です。そこで、ある年の保険金請求額が高額だった、すなわち、治療費が結構かかる病気だったとき、ある保険会社は次年度の契約更新をしてくれますが、ある保険会社はしてくれない、そんなこともあります。
そうすると、契約をしてくれる保険会社は特に問題はありませんが、してくれないと大変です。他の保険会社に加入するにしても、すでにわかっている病気がありますから、その病気は免責事項となり、保険金支払いを受けることができなくなります。つまり、対象外になる訳です。
病気ではなかったどうぶつが保険に加入、しかしそのご毎年治療費が結構かかるようになったら、次年度の保険契約更新をしてもらえなかったという話です。大変に困ったことになりますよね。そのことを知っていたら、その保険会社を初めから選んではいなかったかも知れませんよね。ハシゴを外されてしまったような、そんな印象です。
こんなときには、保険金は受け取れません。
そして、保険金請求に限らず、人でもどうぶつでも、同じお薬が必要だというときに、診察を受けずにお薬だけ受け取ることはできないかと考える方があると思いますが、これは禁止されています。人は厚労省から、どうぶつは農水省から禁止されています。そして、この行為に保険金は支払われません。
ちょっと余談ですが、医師も獣医師も、診察をしないで薬だけを販売することはできないのです。診察をしてから、お薬を処方して、それを薬局なりクリニックなりで購入してもらうことは問題がないのですが、診察をしないで薬だけを販売することが禁止されているのです。
こんな良い保険会社がありました。完全にユーザー目線です。
保険会社は、どちらかというと保険金を支払わない方に動くと思っていました。そこで、一つの実話です。
A保険会社とB保険会社とします。
ほぼ同じような歯科診療を行った2匹の犬がいました。犬aはA保険会社に加入、犬bはB保険会社に加入しています。
どちらもほぼ同じくらいの歯周病があります。
犬の歯周病は全身麻酔下での治療が必要です。全身麻酔前の諸々の検査をして、麻酔をかけて、歯科処置をして、お薬をお出しして。ほぼ同じような治療を行いました。
そして、犬aの飼い主さんも、犬bの飼い主さんも、診療明細書をそれぞれの保険会社に送られました。すると、A保険会社からのお電話では、歯周病があったのかなかったのかの問い合わせでしたので、歯周病があったことをお伝えすると、それは保険の適応なので、保険金を犬aの飼い主さんにお支払いするということでした。しかも、その1週間前に歯周病の診察だけで来院されたことがあり、そのお話をすると、遡ってその分も保険金をお支払いするとのことでした。さらに、病歴を聞かれましたので、ちょうど1年ほど前に、犬aに行った歯周病治療のことを話しますと、1年も前なのに、保険金をお支払いする対象期間だったとのことで、その分もお支払いされることになりました。後日、飼い主さんはとても親切な対応に驚かれていました。
一方、犬bの診療明細書を受け取ったB保険会社は、顎の骨に異常があるとか、歯以外のところにまで異常が及んでいないと、クリーニングと同等の扱いで、保険金は出ないということでした。
選んだ保険会社によって、このような違いが生じます。
ちなみに、A保険会社の保険料は高めのようです。それでもこの対応は、価値があると思いますし、私は獣医師として、自分の犬は自分で治療するので、動物の保険は必要ありませんが、もし加入するとしたらA保険会社以外は考えられません。
もし保険に加入されるご予定の方がありましたら、保険料、保険金お受け取り方法、かかりつけの動物病院が窓口清算に対おいしているか、保険の適応範囲は十分か、などの要件をご確認の上、加入の検討をしてくださいね。
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