犬も高齢化が進み、認知症がみられることがあります。犬の認知症は、認知機能不全とか認知機能不全症候群などと言われます。
犬の認知機能不全(認知症)は、症状から診断する病気です。他の病気ではないことが前提です。他の病気ではなく、加齢に伴って起こる脳の病気です。
犬の認知機能不全(認知症)には、どのような症状が見られるのでしょうか?
認知機能不全(認知症)の5兆候というものがあります。
1 見当識障害
2 社会性の変化
3 睡眠周期の変化
4 不適切な排泄
5 活動の低下
です。それぞれの英語での頭文字から、DISHAと言われるものです。
犬の認知機能不全(認知症)をチェックする項目があります。
・うろうろ歩き回る
・壁や床を眺め続ける
・人や動物に対する認識が変化する
・物や家具の後ろで動けなくなる
・壁や家具に向かって歩く
・呼びかけに対する反応が変化する
・水入れのところで立ち止まっているが、飲まない
・そそうの頻度が増す
・こぼしたブードを探せない
・夜中に頻繁にうろうろする
・人に触られることを嫌がる
・理由がわからない吠え
・昼夜のリズムが逆転する
・活動時間が短くなる
多くが当てはまるようであれば、認知機能不全(認知症)の可能性が高くなります。
そして、獣医師は、ときに100点法による認知症の診断基準というものを使って認知症を判断することがあります。これは、症状リストにそれぞれ点数がついていて、その点数の合計点で認知機能不全(認知症)を判断するというものです。
この方法の良いところは、早い段階で認知機能不全(認知症)を診断できるということです。そして
早い段階で診断できるということは、早くに手を打つことができるということです。
認知機能不全は、確実に悪化する病気です。しかし、打つ手を打てば、悪化を遅らせることができます。認知機能不全(認知症)を加齢による打つ手のない病気と考えて何もしないのと、早期に発見して、できる手を打ち場合とのその後には、明らかな変化が見られます。
そのためにも、早期に発見することが大切になりますし、獣医師にもそのスキルが求められます。
どのような対処法があるのでしょうか。
先に大切なこととして、何をしても悪化はします。そして治ることはありません。が、悪化を先送りにすることは可能です。
治療方法としては、
行動療法、食事・サプリメント、薬剤、です。
そして、飼い主さんにまず求められるのは、犬にストレスを与えないようにすることです。そそうをしたり、夜中に吠えたりすることを受け入れて、優しく接してあげてください。そして、認知機能不全(認知症)の犬と生活をされている飼い主さんの生活の質が著しく低下することを獣医師は知っています。どうにもならないこととしてあきらめないで、ぜひ相談してみてください。
お近くの方でしたら、こちらの動物病院もいいですよ。
私がみる認知機能不全(認知症)の犬とそのご家族のお話です。芝犬に多いことがわかっています。ある統計では、認知機能不全(認知症)の犬の約30%が芝犬だったとされています。そうですね、芝犬が多いですね。そして、多くの芝犬は昼夜逆転の生活になります。昼間は熟睡していて、夜になると吠えます。吠える声の大きさは様々です。大きな声もありますし、小さな声もあります。小さな声だとあまり気にならないかと言いますと、意外と気になります。夜中ずっとクーンクーンと鳴いていると、やっぱり気になります。
どのようになるのでしょうか。
多くの飼い主さんは寝不足になられます。そして、認知機能不全(認知症)の犬は、うろうろと歩き続ける傾向があります。しかし足の筋肉や神経などの老化によって、思うように歩けないことが多く、そうなりますと、歩かせてくれって鳴いたりします。飼い主さんの中には、ご自身が中腰になって犬を支えて、歩かせてあげたりしますが、やめるとまた鳴きます。
犬は狭いところに入っていこうとしますから、留守中は注意が必要です。家具の隙間や、ソファーの下などに入り込んで、出られなくなる犬も多いですね。そして、そこで排泄をしていて、ベトベトになっていることもあります。
これらずべてを仕方がないこととして受け入れることは難しいことです。どうにかしたいと、当然に思われますが、この症状が基本的には悪化します。進行するということです。
できるだけ早い段階で認知機能不全(認知症)を発見できれば、できることもあります。その中には、行動療法もあり、これもまた飼い主さんの負担になるでしょう。子犬の時のように、犬につきっきりで行うものだからです。
私が仕事をしている地域では、ここ数年芝犬が増えた印象です。穏やかな老いを迎えられるようには、かかりつけの獣医師さんとの連携もご検討くださいね。