【閉塞性猫下部尿路疾患】救急!! 猫のストルバイト尿路結石を獣医師が解説します。

注意
猫、特に雄猫がほとんどですが、放置すると確実に死に至ります。

飼い主さんがまずやらなければならないことは、できるだけ早くに動物病院に連れていくことです。様子をみてはいけません。
尿道閉塞が起こってしまうと、どんなに遅くても24時間以内に治療が始まらないと、回復不可能な事態になると思いますね。それでも間に合わないかも知れません。それくらい救急!!です。

どんな病気?

雄猫のオシッコの出口の先端は非常に細く、ここに小さな結石や膀胱炎の炎症によってできたものが詰まってしまい、それによって尿が出せないでいることで起こります。これによって、膀胱の中に尿が充満し、かなりの圧がかかり、さらには、腎臓には急性腎不全が起こります。それによって、尿毒症が起こり、死に至ることがあります。

どうなるの?
膀胱炎→尿道閉塞→急性腎不全と進みます。

急性腎不全になっていない、かなり軽い段階で来院されることもあります。

そして、急性腎不全がみられていますと、この後からはその腎不全の程度により、完治する場合、亡くなってしまう場合、神経性尿失禁という症状が残る場合などに分かれます。この中で、ほとんどの猫さんは完治します。私が診察した猫さんで、亡くなっていまった子はほとんどいません。記憶していないくらい少ないです。

動物病院では何をするの?

動物病院では、できるだけ早くに、この詰まりを解除します。

私が診察する猫さんは、結構な割合で麻酔が必要です。全身麻酔をしてから、詰まりを解除します。まずは、猫さんの静脈確保をして、鎮静をかけたり、全身麻酔をかけたりして、とにかく尿路閉塞の解除がしやすいようにします。尿路閉塞の解除には、通常カテーテルと呼ばれる細いチューブを出口先端から膀胱まで入れます。これさえ入れば、オシッコが出るようになります。

しかし、このカテーテルを入れるということがとっても難しいことがあります。

カテーテルを挿入するときには、鎮静にしても、麻酔をかけるにしても、急性腎不全があるだろうと予測しながら血液検査も同時に行います。急性腎不全が起こっていれば、多くの猫さんは高カリウム血症になっています。そうなると、生理食塩水などの静脈点滴をしながら、カテーテルの挿入を試みます。

猫さんが死んでしまうかもしれないくらいの閉塞が起こっているわけですから、簡単に解除できるだけではなく、非常に解除に時間がかかる場合もあります。

猫さんの麻酔時間はできるだけ短くしたいですし、点滴が始まっているので、尿も新たに作られるわけです。すでに膀胱には目一杯の尿が溜まっている中でです。

とにかく新人の頃は焦りました。今はあまり焦りませんけどね。

やっとのことで詰まりが解除できたら、あとはカテーテルを包皮に縫い付けて、それを猫さんが取ってしまわないようにエリザベスカラーをつけて、ひとまずは終了です。

もしも、閉塞を解除できなかったらどうするか。

膀胱に直接針を刺して、そこから尿を一旦抜くというのも方法かも知れませんが、パンパンに尿が溜まっている膀胱ですから、そこに針を刺して、尿がお腹の中に漏れ出してしまったというのを知り合いの獣医さんから聞いたことがあります。

いわば、水風船を針で突いたときみたいになったわけですが、こうなると回復手術が必要になりますね。結構大変な。

私は、針を刺して抜こうかと何度も思うほど、閉塞物が硬くてカテーテルが挿入し辛いことがあっても、絶対に挿入するんだ!と、とにかくやっています。それが一番安全だからです。そうやってできなかったことは幸いにしてありません。

その後は、挿入したカテーテルを通して膀胱洗浄などをしたり、急性腎不全の治療をしたりして、多くは数日の入院で元気に退院していきます。

詰まっていた物の中には、ときにストラバイトと呼ばれる結石もあります。

これは体質として、できやすい猫さんがいますので、元気に治ってもその後に食事療法をすることをお勧めしています。

ちなみに、私はシュウ酸カルシウム結石持ちです。ヒトの場合には、食事療法のい話はされませんね。多分、しても無駄なのではないでしょうか。できるときにはできるんですよ、きっと。

でも、猫さんのストラバイト結石には、食事療法は有効ですよ。