【犬と猫の腎性貧血】腎不全が進むと貧血が起こる。獣医師が解説します。

貧血

血液中の赤血球が少なくなったり、赤血球の中にあるヘモグロビンが少なくなることを貧血と言います。

赤血球を作る増血因子

腎臓では、赤血球を作るための増結因子、エリスロポエチンが作られます。慢性腎臓病では、このエリスロポエチンが不足して貧血が起こります。

この貧血は、腎不全のステージ分類、ステージ3で目立ってきます。しかし、それ以前から貧血が見られるどうぶつもあります。

貧血の診断

貧血を診断するには、血球算定と呼ばれる血液検査を行います。そこで調べるものは、赤血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビン値そして網状赤血球数です。

貧血の原因

貧血の原因には、腎性貧血の他に、失血、骨髄性、鉄欠乏性、自己免疫疾患があります。ここで、腎性貧血と診断するためには、腎不全があること、そして、その他の貧血ではないことを確かめられれば、腎性貧血と診断できます。

腎性貧血の治療

少なくなっている腎性貧血の原因であるエリスロポエチンの低下を補うために、赤血球増血因子を投与します。遺伝子組み替えヒトエリスロポエチン製剤や、ダルベポエチンアルファなどがよく使われます。どちらも注射です。そして、腎性貧血は、鉄欠乏性貧血と異なり、鉄剤だけの投与では改善しません。赤血球増血因子とともに、鉄剤を投与することが大切です。

治るのか?

この腎性貧血の元となる慢性腎不全が、治癒しない病気であるために、一次的な腎性貧血の改善があっても、どうぶつが助かることはありません。それは、慢性腎不全が進行性の疾患だからです。

しかし、貧血で元気がなかったどうぶつが、貧血が解消されると元気になることはよくあります。決して慢性腎不全が治るわけではありませんが、貧血が解決するとどうぶつの良い状態を見ることができ、ときに食欲も出ますので、飼い主さんは安心されますね。