【犬の歯周病を予防するには】動物病院で行われている処置の手順を獣医師が解説します。

犬の予防歯科処置

犬の予防歯科処置には、大きく分けて6つの工程があります。

  • 1 歯垢・歯石除去
  • 2 ルートプレーニング
  • 3 キュレタージ
  • 4 ポリッシング
  • 5 洗浄
  • 6 貼薬
安全に行うためには全身麻酔が必要です。ときに無麻酔で歯石除去などする人がいたり、それを望んだりする人がいるようですが、無麻酔でできるのは、この全工程の歯石除去のしかも一部だけです。それすら本来は無麻酔ではやるべきではありません。ただ、麻酔を必要以上に嫌がる飼い主さんがあるのは事実で、それを見越した人がそのような飼い主さんを集めていると聞きます。残念なことです。

これらの内容を解説します。

歯垢・歯石除去

  • 基本的な歯垢・歯石除去
  • 微小な歯石除去
  • 歯肉縁下の歯石除去

基本的な歯垢・歯石除去

通常は超音波スケーラーと呼ばれる機器を使います。超音波振動で歯から歯石を剥がします。このときに熱を発するので、その熱を抑えるために、水を歯に当て続けながら行う処置です。無麻酔ではできません。全身麻酔下で行います。

微小な歯石除去

鎌形スケーラーと呼ばれる器具を使います。超音波スケーラーで処置をした後に、超音波スケーラーでは取りにくい歯石を除去します。ほとんどは、切歯の間など、隙間が少ないところに使います。もしかしたら、無麻酔でもできるかも知れませんが、危険です。正しくは全身麻酔下で行います。

歯肉縁下の歯石除去

超音波スケーラーの歯肉縁下様チップを使って行います。縁下とは、歯と歯肉の間の、通常は目に見えない部分です。ここの歯石を除去することはとても重要です。無麻酔ではできません。全身麻酔下で行います。

ルートプレーニング

できてしまった歯周ポケット内には、歯垢や歯石が付着しています。その歯垢や歯石には細菌が多く増殖しているので、細菌や歯石によって汚染されたセメント質を取り除きます。しかし、セメント質を取りすぎることは悪影響もあるので、注意をしながら行います。歯と歯肉の間にできた歯周ポケットに器具を入れて行いますので、無麻酔ではできません。全身麻酔下で行います。

キュレタージ(歯肉縁下掻爬 : しにくえんかそうは)

炎症のひどい歯周ポケット内の歯肉を器具を使って引っ掻きます。そうすることで、新しい歯肉組織ができますので、その新しい歯肉組織と歯面が密着してポケットが浅くなることを目的として行います。これも歯肉に傷をつける操作ですので、無麻酔でキュレタージを行うことは犬に大きな負担をかけるどころか、私は虐待だと思いますので、必ず全身麻酔下で行います。

ポリッシンング

歯の面を専用の機器を使って磨き上げます。マイクロモーター、研磨用ペースト、ソフトラバーカップを使います。これは無麻酔でもできるかも知れませんが、歯の裏側などは無理でしょうね。必ず全身麻酔下で行うべきです。

洗浄

出来るだけ弱めの水圧で徹底的に洗浄します。それなりに水を多く使いますので、無麻酔では危険です。正常な感覚をもつ犬であれば、かなり嫌がるはずです。全身麻酔下で行います。

貼薬

歯周病の程度によっては、できてしまった歯周ポケットに薬を塗布します。抗生物質を塗ることもあります。これを無麻酔で行うと、多分塗ってすぐに犬は舐めてしまうでしょう。無麻酔で貼薬することは、やってないのと同じです。

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